「ヘナ」についての疑問、質問にお答えしていきます。
「ヘナQ&A」の回答は江口照久さん(「エムテック」代表、美容師)。インドヘナだけでなく、国産ヘナも知る「国産ヘナの生産者」。そしてプロヘナ、ヘナ歴25年のヘナ伝道師です。
Q ヘナはインド産で、国産ヘナがあるとは知りませんでした。
ヘナといえばインド産。国内産ヘナを最近耳にします。
琉球ヘナ品種は3、4種確認されています。
国産ヘナの中には、インド産沖縄育ち、外国産を国内加工、国産と外国産ミックスタイプ商品もありますから、注意、確認が必要です。
ヘナの原産は、インドとも北アフリカとも言われています。海外ではインド・ネパール・エジプト・モロッコ・イラン・フィリピン・タイ・台湾などで、国内では石垣島~宮古島~沖縄本島~与論島~奄美大島などで栽培されています。
へナは越冬温度が15℃と言われていて、日本での栽培適地は奄美大島以南となります。2020年頃から沖縄産ヘナの苗を持ち込み、高知県内でもヘナが栽培されています。
沖縄ヘナの歴史 ~ 琉球王国以前から
沖縄でヘナが自生したのは紀元前、つまり数千年前だと考えています。紀元前から6世紀までの歴史書は存在していないため、ヘナがインドから沖縄に渡ったという史実は確認することができません。
定説では、その昔、クレオパトラが爪を染めていた、神事の際に化粧として施されたとあります。記録に残っているのが紀元前80年頃ですが、それ以前からヘナは栽培され、葉を乾燥させて粉末にしたものが植物染毛剤や薬剤、防腐剤として使用されてきました。殺菌効果や体温を下げる効果があることも知られており、インド伝承医学アーユルヴェーダでも皮膚病予防、止血、おでき、やけど、打撲傷、防腐剤、皮膚炎などの薬剤として使われていました。
中国の前漢と呼ばれる紀元前2世紀にはシルクロードによりユーラシア大陸の交易路網が完成し、インドと中国は宗教的交流や交易も行なわれていたことから、その後、中国との関わりが強かった琉球王国の前史における物流交易の中にヘナが紛れ込み、沖縄へ渡ったのではと考えられています。
琉球王国は1429年から1879年(明治12年)の450年間ですが、それ以前よりすでにヘナは沖縄に根付いていたようです。
琉球ヘナ品種は現在3種+1を確認
私は、世界で最も良質なヘナの産地とも称されるインド・ラジャスターン州ソジャットのヘナ畑・ヘナパウダー製造工場へ日本の理美容師さんらを毎年案内してきました。しかし、日本国内と大きな違いがありました。それは、気候や土壌、製造方法が違うだけではありません。
お米を例に説明したいと思います。みなさんはタイ米(長粒米)をご存じですか? インド産といった外国産のヘナと国産のヘナとの違いはまさにタイ米とコシヒカリくらいの差と表現できます。
私は全国各地を訪れてヘナのセミナーを開催していますが、時々、参加者から「国産のヘナを使ったことがあります」「沖縄産のヘナ使っています」と言われることがあります。内心、ウチのヘナ(美らヘナ、うるまヘナ)は「魚沼産コシヒカリなんだけどな」などと心に中でつぶやいていますが・・・。
というのは、国産ヘナにも品種、産地、土壌の違い、堆肥や追肥の有無、雑草処理の有無、加工方法の違いがあり、国産の中でも大きな違いがあります。
品種と書きましたが、琉球ヘナの品種は現在3種+1が確認されています。国内でもインドヘナのタネを持ち込み育てている農家(メーカー)も確認されています。この場合でも、インドで育ったインドヘナと沖縄で育ったインドヘナはまったく別物になっています。インド生まれインド育ちとインド生まれ沖縄育ちのヘナでは、葉の色やその成分も大きく異なっています。それは気候、土壌の違いが大きいと思われます。
比較すると、沖縄育ちのヘナ方が染まりも感触もよいことを実験により確認しています。
琉球ヘナに比べてインドヘナは初期のヘナペーストの粘りが強く、それを好まれる方も少なくないようです。さらに、国産ヘナの中には外国産ヘナを輸入し国内加工することで国産と表示されているヘナ商品や、国産ヘナと外国産ヘナのミックスタイプもありますので、注意・確認が必要です。
あふれるヘナ情報、うのみにできないヘナ業界
ネット社会の今日、ヘナの情報はあふれていますが、正確な情報ではないコンテンツも多く含まれています。なかには、ヘナの健康イメージを前面に出してのドライな商売、それを私は「健康ヘナビジネス」と表現していますが、それも散見されます。
私からのアドバイスです。
Webサイトで紹介されている内容を鵜呑みにできないのが、ヘナ業界です。嘘も蔓延しています。同業として恥ずかしいとも思いますし、嘆かわしいことです。ぜひ、国産であれば畑の見学や刈り取り体験、工場の見学を行い。ご自身で確認されることをおすすめします。
ヘナメーカー「エムテック」代表・美容師・ヘナインストラクター
ヘナ歴25年、ヘナ伝道師グッチ
ヘナ伝道師として22年、1000回以上の「ヘナ塾」を全国で開催。現在、沖縄うるま市で、ヘナの畑作り・栽培・加工・販売まで行なっている「国産ヘナの伝道師」。