50歳になる1年前、美容師免許の取得を思い立ちました。ヘナのよさをもっと広めたい!との思いからです。熱い思い、負けん気は人一倍強いのだけど、さすがに未知の経験のオンパレード。体力、美容技術はとほほほ・・・なことばかりの美容専門学校の3年間でした(通信課程)。
入学当初から五十肩で、おまけに立ち仕事は皆無の中、足は悲鳴を上げてしまい疲労困憊。ワインディングは指が硬直してぜんぜん巻けない~~(涙、涙)。
16歳の若者に囲まれて春夏年2回、15日間のスクーリングの日々。話題といえば恋愛、芸能人、食べもの・・・、LINEのグループに入れてもらうなど、50歳過ぎて初めてのことだらけ。カルチャーショックからか、2年目の夏には円形脱毛症になってしまいました。
環境の違いにあたふたしながらそれでも2019年には卒業にこぎつけ、美容師資格を取得できました。
そんなわたしの3年間(2016年~2019年)の美容師合格への道のりをシリーズでお伝えします。社会人で、これから美容師を目指そうとしている人たちの参考になるとうれしいです。こんなダメダメなわたしでも合格できたのですから・・・。
第1回は、なぜ50歳で美容師に? そして専門学校はどうやって決めた? です。
今回は、実技&筆記の概略、合格率、美容専門学校の選び方を知りたい人向けの記事です。
また、昼間2年ではなく、通信課程3年の話になります。
「美容師合格率100%」の貼り紙に妄想がはじまる
「新版 なっとく!のヘアカラー&ヘナ&美容室選び」の執筆(2012年)後、実践的な弱さを実感し、理屈っぽさはダメだなと思いました。編集者としてだけでは足りない。カラーリング主体ではなく髪の質にこだわる美容師たちと連携していくには、同じ立場、目線で見ていくことが必要だという気持ちが強くなってきました。
美容師でなくても「ヘナ染めでしっかり稼げている」「(ヘアカラーの)美容師よりずっと理解がある」という話を聞いて、それはぜったいダメ!と熱く反論したことがありました。ヘナが安全な毛染めだからこそできるとも言えますが、ヘアカラー主体の美容業界としっかり向き合ってヘナを広めていくには、無資格のヘナインストラクターもしかり、法律的なことはしっかり押さえていかないといけません。美容師に失礼なことです。
現在美容師の国家資格の合格率は約60~80%
2015年3月、自然食関係の講演会会場でヘナの販売を手伝ったとき、その会場がたまたま池袋にある美容専門学校でした。構内を歩いていると「美容師国家試験合格率100%」と貼られていて、「美容師の合格率は高いんだな・・・」と頭にインプットされたのです。
わたしも美容師になれるかな・・・なんて妄想がこの時からはじまります。
そのちょっと前、ヘナサロンの美容師のパートナーが子育てをしながら通信課程に通学し、国家資格を目指している話をたまたまヘナ染めをしてもらっているときに聞きました。3年で費用も100万円くらい、わたしのようなアラフィフの人たちもいるとのこと。
高い合格率だけではなく、通信課程だと時間とお金のハードルもそれほど高くなさそうと思いました。
のちになって、この「100%」は昼間の学生(2年間)の合格率で、また合格が見込めない生徒は合格率を下げないため受験させないということも聞きました。
現在美容師の国家資格の合格率は約60~80%。国家資格もいろいろで、気象予報士の合格率は5%前後、宅建の合格率は15~18%からするとかなり高めだとは感じました。2022年4月1日の発表によれば第45回美容師国家試験の合格率は92.3%。初の90%台を記録しています。
昼間2年、通信課程は3年通学後、受験資格取得
美容師として働くには、美容師国家資格が必要です。厚生労働大臣指定の美容専門学校の必要課程を修了し、受験資格を得たうえで、美容師国家試験に合格し、美容師免許を取得しなければなりません。認可を受けた美容専門学校に昼間2年間、あるいは通信課程では3年以上通学して、過程を終了することで受験資格を得ることになります。なお、美容師専門学校の入学資格は「高校卒業以上」がほとんどですが、中卒でも高卒認定試験を受験するなどすれば大丈夫です。
美容師国家試験は「筆記試験」と「実技試験」の2つで、両方に合格してはじめて美容師免許を取得することができます。試験は毎年2月と8月。4月入学の場合、専門学校在学中の2月に受験することが最短です。不合格となった場合、再度受験となります。
2月の合格率は80%前後、8月は40%~60%と大きな差があります。春よりも夏のほうが合格率が低く、100%近くに届かないのは、通信課程の生徒が合格率を下げているからだと言えます。
わたしも1度目の2019年2月受験は実技試験の「カット」で不合格になり、2度目の挑戦(8月)で合格しました。再チャレンジ組です。2019年度なので「85.1%」の合格率に入れず、「58.1%」の合格率に入っています。筆記試験は2月で合格し、次回の8月の受験では免除になっています。
国家試験「実技」と「筆記」
実技試験の約1カ月後に筆記試験が行なわれます(8月と9月、2月と3月)。実技試験は「衛生上の取扱試験」と「基礎的技術試験」の2つがあります。
「基礎的技術試験」は課題が2つで、第1課題「カッティング」と第2課題「セッティング」(ワインディング、オールウェーブのどちらか)。禁止事項の有無や 仕上がり状態などを確認して採点されます。第2課題は試験日の3か月前に告知されます。
「衛生実技審査」では使用する用具類などの審査、爪のチェックなどたくさんの項目がチェックされます。技術はばっちりなのに、衛生で不合格になることもあります。
<実技/第1課題>カット 20分
モデルウィッグをレイヤースタイルに仕上げる。カットの長さは決まっている(前髪6cm、もみあげとネープは10cm)。
<実技/第2課題>ワインディング 20分
パーマの基本技術で、毛髪にロッドを巻く技術。必要なロッドがきれいに収まっているか、ブロッキングが綺麗に取られているか、時間内に所定のロットを巻き終わるか。
<実技/第2課題>オールウェーブ 25分
ウェーブパーマの基本技術。頭部全体をウェーブで形作ったヘアスタイル。髪にジェル状のローションを塗ってウェーブを作る。
入学前、レイヤー、ワインディング、オールウェーブという言葉もよくわからなかったわたしです。
<筆記>5分野から50問
筆記試験の試験科目は、関係法規・制度および運営管理、衛生管理(公衆衛生・環境衛生、感染症、衛生管理技術)、保健(人体の構造および機能、皮膚科学)、香粧品化学、文化論および美容技術理論の5分野。 50問中60%以上の正答率があれば合格だが、それぞれの分野に1つでも0点があると不合格。
時代遅れのスキル「オールウェーブ」実技の見直しへ
10年程度で美容師国家試験の「実技」内容は変更されていて、現在も見直す方向です。オールウェーブは時代遅れのスキルとも言われ、美容院でのオーダーもほぼない状態です。2022年3月厚生労働省の「第3回 美容師の養成のあり方に関する検討会」でも「オールウェーブ」については整理を検討する方針が出ています。また、実技に「まつ毛エクステンション」を導入することも検討されています。
試験の詳細は5月上旬と11月上旬にホームページで公表されます。
どの美容専門学校にするか?
「美容学校に入学して、美容師になる!」と決めたのが2015年夏。仕事(編集、出版プロデュースなど)の調整&整理もあって、最終決定をしたのは秋でした。どこの専門学校にするかを調べはじめていると4月入学、10月入学とあることを知りましたが、けっきょく10月入学には間に合いませんでした。
さて、どこの専門学校にするか?
通学の利便性は? 授業料はいくら? 夜間通学か、春夏スクーリングか?
通信課程は資格試験のためであって、さほど変わらないから通学の利便性、授業料で決めるといいよ!と美容師からも言われました。
何を優先順位とするかになります。わたしはこの2つ(通学の利便性、授業料)を基準にして、まずは東京都内と決めてホームページでリサーチし、山野美容専門学校、資生堂美容技術専門学校、コーセー美容専門学校の3つに絞って、通信課程の資料を取り寄せました。オープンキャンパスなどを利用して、雰囲気を知ることもできます。
資生堂、コーセーは「買ってはいけない」シリーズ、そのほかでもいろいろ商品のことあれこれ言ってきたよな!というのもよぎりつつ、フラットに見ようとはしました。でも、やはり無理だった。
山野美容専門学校は、日本初のパーマ指導者と言われている山野愛子氏(1909 ~ 1995年、1980年女性で初めて勲三等瑞宝章を受章)が創設した学校で、老舗も老舗。
今月11月7日(月)NHK「ヒロイン誕生!ドラマチックなオンナたち」にて、<美容界のパイオニア・山野愛子の生きざまに、若手女優・植村友結がドキュメントとドラマで迫る!>が放映されました。
最終的には通学(時間、乗り換えなど)、授業料(3年間で54万円 + 教材費で100万円以内と見積もる)を考えた上で、「夜間コース」(18時~、週数日×数カ月)よりも「春期・夏期コース(15日~18日のスクーリング、月曜日~土曜日)のほうが自分にはあっていると思い、山野美容専門学校通信課程「春夏コース」に決めました。
現在では「土曜日コース」も設けられていて、それぞれのライフスタイルでより選べるようになっています。
卒業証明書を卒業大学から取り寄せる、保証人のお願いをするなど書類の準備をし、12月8日に「新版 なっとく!のヘアカラー&ヘナ&美容室選び」の増補版が出版された1週間後の12月15日、願書を提出しました。
山野美容専門学校に提出した志願、志望動機
以下が、山野美容専門学校に提出した「志願」動機になります。
先端巨大症という難病と30数年つきあってきました。容貌が変わる病気なので「美」について考えさせられました。難病サバイバーとして、健やかに暮らすことができるようになったこの10年、患者会にかかわってきて、私ができることは何かないかと思ったとき、美容院に足を運ぶことすら気後れした過去を思い出しました。美容師という立場になって、容貌の悩みを抱える彼らをサポートできたらすてきなことだと思うようになりました。そして、学ぶには美容の伝統を受け継いでいる老舗の貴校だと思い、志望しました。
ヘナの普及以外、わたしが美容師を目指そうとしたもう1つの理由になります。
クリスマスイブに「入学許可書」(合格通知)が届きます。2週間以内に入学時納入金10万円の振り込みをすませないといけませんでした。当日振り込むと年末12月30日に「入学通知書」が届きました。
これで晴れて春から美容学校の生徒!!
2015年は夢に向かって決断、そして「整理の1年」となりました。そして2016年、50歳になってからの入学となったのです。
現在は、3年間の学費64万円(入学時13万、10万2000円を前期後期5回で支払う)。これ以外、美容実習用教材費あわせて、3年間で合計100万円程度。ちなみに専門課程(2年間)の学費は268万円。ただし課外授業受講費、海外研修旅行参加費は別途。
雨の中の入学式、ヘアカラーの同級生でいっぱい
2016年5月17日、通信課程の入学式。雨降りでした。入学者数184名の中、入学式の参加者は70名ほど。
久しぶりに白いパンツスーツを着ました。
10代の初々しいみなさん、私よりも年上かなと思う人たちなどもいて、年齢横断がなんだかとっても新鮮でした。
後のほうに腰かけていたのだけど、うーむ・・・8割くらいがヘアカラー、カラーリングの色髪をしていて、これは、ヘナの話をするにはほど遠い世界だなと思いました。
当日(2016年5月17日)の日記に「夢へ歩き出した」と書いてあるのだけど、3か月後の8月からはじまるスクーリング初日には、これは大変な選択したのではないか・・・と思うわたしでした。
日記をめくっていると、美容学校に通った日々のこと、国家試験に向けてやってきたこと&感じたことが綴られています。
これから美容師を目指そうとしている社会人のみなさんに、50歳からでも美容師になれる、遅くはないよ!ということを伝えたいです。
でも、大変だったのも事実。
いくつでも何か挑戦することって悪くないよ!いうことも伝えたいかな・・・(つづく)
【追記】小学3年から日記をつけて47年
わたしは山口県岩国市の出身で、米軍基地(いまでは極東最大の米軍航空基地「岩国基地」)に近い小学校に通っていました。騒音、爆音で窓が解放できないため冷房が完備されていたので、暑い夏は快適。プール授業の後の教室はクーラー(と言っていましたね)がよくきいて、ひんやりしていたのを思い出します。
制服もなし! 今日はどんな服でいこうか!と生徒にも個性が出ていました。自衛隊勤務の子どもが多く、転勤族のため制服があるとまたすぐに買い換えないといけないからだと聞いています。
校庭には神社と鳥居があって、登校時に鳥居をくぐる時に一礼、下校時に鳥居をくぐってから振り返って一礼して生徒たちは帰っていました。
アメリカを常に近くに意識し、自由にのびのび過ごし、日本の信心を感じるような環境でした。
宿題は日記と歯磨きチェック
小学校の3、4年生のときの担任は藤澤敏郎先生。ここ数年、小学校のときの同級生とランチをすることもあって、「藤澤先生はほんとすてきだったね」という話で盛り上がります。
実家の畑に芋ほりに連れていってくれるなど楽しい思い出ばかり。先生の怒ったイメージがまったく浮かばない。宿題は2つのみ・・・。1つは、日記をつけること。もう1つは、歯磨きチェック。朝、日記を提出したら先生がコメントして下校前に戻してくれます。歯磨きは朝晩磨いたら◎、夜だけは〇、朝だけは△、磨かないと×。
日記を読めば生徒の環境、日常、性格、交流範囲などもわかります。歯磨きチェックも手をあげての確認でしたが、ずっと◎の人もいれば、磨かなかったに正直に手をあげてみんなから「汚い!」と言われている生徒もいました。○×くんって、どう思われるかはあまり気にしないんだな・・・と思ったものです。
日記をつける習慣はいまも続いています。
コロナ禍に時間ができたので、日記帳、手帳、写真の整理をしました。コロナがなかったらきっといまでもそのままだったかもしれない。宿題ということではじまったのもあって”見せる日記”を意識しているところも見られ、初期の頃、学生時代は優等生っぽさも感じられます。
「顔が変わる病気」(アクロメガリー)になっていたこともわからずに過ごしていた高校、大学時代の日記はまだ冷静に読み返せないままです。でも、小学3年からの日記(1976~2022年)は財産。いまの時代はプライバシーうんぬんで難しくなっているかもしれないですね。
わたしは藤澤先生に感謝!です。歯磨きはもっとしっかりしておけばよかった・・・。
美容学校3年間は「5年日記帳」の1日5行日記になりました。10年日記はどうも書きにくくて続かず2年で変更。B6サイズの 「石原5年ダイアリー」がコンパクトでお気に入り。2021年から同じ「5年日記」の2冊目になりました。
3日坊主でも大丈夫なように、工夫されている日記帳。
毎日書かなくても大丈夫。
同月同日の5年分、一目で読めます。
【さらに追記】「大元」という遊びはなんだ?
初日記(1975年3月26日)に「大元をしてあそびました。」とあるのだけど、この遊びがどうも思い出せないので調べてみました。
次の記事にかなり詳しく出ていました。
地面に田の字型を描きます。その4つのマスに「天」「大」「中」「小」と名前をつけて、1人ずつ入ってボールをバウンドさせるゲームで、地域で名称もルールも違っているようです。
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